ザ・インタビュー「31字に込められたホストたちのコロナ対策」|desighstories Presented by 自分流×帝京大学

作家・辻仁成さんが、新宿・歌舞伎町のホストにインタヴューした記事。

コロナ禍のフランスから遠隔で取材が行なわれたもようです。

インタヴュイーはホスト歴24年、6件のホストクラブを経営している人。

インタヴュアーの動機は、コロナ禍で諸悪の根源のように報道されている歌舞伎町のホストクラブの実態を知りたいというもの。

ホスト側の意見として、叩かれることには慣れている、という発言から入る対話は、この企画の自然な流れでしょう。

そのうえで、歌舞伎町が感染源として指摘されていることに対しては、事実として受け止めているという認識。これは、飲食業の経営者としては至極真っ当な感覚ですね。

インタヴュイーの手塚さんには区長から電話があり、相談を受けたと言います。これは、行政側が、感染者が出ていることは把握しているけれど、ホストクラブの実態が把握できていないための申し出だったようで、彼は6月2日に区長と面談。翌日から2日間にかけて、事業者40人を連れて説明をしに区役所へ行ったとのことです。

その後、6月18日には「新宿区繁華街新型コロナ対策連絡会」を立ち上げます。

こうした協力体制は、感染症を押さえ込むためには極めて有効な手段だと理解できますが、データが把握できるようになったことで、逆に歌舞伎町という固有名詞の感染者数が表面化して、「協力したことがマイナスになった」という風向きになってしまったそうです。

こうした風潮に負けず、感染症を押さえ込むという最大の目的にブレずに立ち向かっていくことができたのも、最初に指摘した「叩かれることに慣れている」という“ホスト根性”ともいうべき意識が功を奏したと言えるでしょうか。

例えば、最初の頃ってガイドラインが出た時に、自分たちの店がやってる予防対策の方が全然レベルが高くて行政や保健所が驚くくらいだったんです。例えばうちは、入り口で足の裏を消毒させて、換気、検温、物理的にできることは全部やってると思いますね。

意識高い系、というとヘンかもしれませんが、ちゃんと考えていれば、実態を調査しないまま作成した行政のガイドラインとはくらべものにならない内容の規範を作ることができるのだと思います。

実際に、私が話を聞いた某業界では、内閣府からガイドラインの下書きを作ってくれと言われて提出、それがほとんどそのまま政府認定として掲示されているそうです。

ホストクラブってもともと50坪くらいのところにホスト20人が平均なんです。お客さんが10人入ると、だいたい2対1くらいになるのでそれがちょうどいいくらいなんですね。考えると、50坪で30人って全然蜜じゃないんです。飲食店に比べると全然蜜じゃないです。しかも、その10人のお客様とは連絡先を交換するので感染経路は絶対辿ることができるんですよね。だから、もし、感染が出たとしても追うことができる。

もちろん、詰め込んで売上を稼ぐホストクラブ、水商売もあるでしょう。しかし、モデルケースとしてこうした数字を公開し、この状態でリスクがある部分はどれかを医学的に検証し、それをどうすれば回避できるのかを考えることが、とても現実的で効果の期待できる方法論ではないかと思うのです。

ポスト・コロナのウィズ・コロナは、こうした明確な方法論があってこそ成り立つはず。

いつまでもホストクラブが良い悪い、風俗が良い悪い、ライブハウスが良い悪い、と言っているだけでは前に進めない。と思います。